第171回:ノロウイルスのおはなし
水島協同病院 初期臨床研修医 森本みなみ冬場に猛威を振るうノロウイルス。あるホテルで宿泊客が絨毯に嘔吐したものが乾燥・飛散し、集団感染が発生した事例が、良く知られるようになったきっかけです。
ノロウイルスの特徴
ノロウイルスは、増殖力が強く、体内に少量入ったとしても、1日程で1万倍以上に増え、症状を引き起こします。食中毒を起こす病原菌の中でその患者数はノロウイルスが断然トップです。
経口感染、接触感染、飛沫感染など、複数の感染経路があります。症状は急性胃腸炎で、嘔吐と下痢、発熱と腹痛が主です。一度感染した人でも、繰り返し感染・発症するケースもあります。下痢などにより水分が失われますので水分補給は欠かせません。このウイルスに対するワクチンは無く、治療は輸液などの対症療法に限られます。感染から発症までの潜伏期間は1〜2日、症状が治まっても体内には1週間程度ウイルスが存在すると言われており、しばらくは注意が必要です。
適切な処置・予防は?
アルコール消毒では死滅しません。また、乾燥してもウイルスは完全には死滅していませんので、嘔吐物や下痢便の付着しているものはビニール袋などで密封して処理するなどが必要です。
予防としてはまずは手洗い。そして食品や食器・調理器具などの洗浄を行ないます。調理器具や食器の洗浄には、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)が有効です。食品、特にウイルスを多く含むと言われる二枚貝などは85℃以上加熱することも予防の一つです。
ノロウイルスの感染予防策
- ●食事の前やトイレの後などには、石鹸を使いしっかりと手を洗いましょう
手洗いが不十分になりやすい親指や指と指の間もしっかり洗いましょう - ●タオルなど共用で使用するものは避けましょう
- ●下痢や嘔吐等の症状がある方は、食品を直接取り扱う作業をしないようにしましょう
- ●食品中のウイルスは、加熱により感染性をなくすことができます
食品の中心温度が1分以上85℃になるように、しっかり熱を通して食べましょう - ●便や吐物の処理をする時は素手で触らず必ずビニール手袋を使用しましょう
汚物の消毒は、市販の塩素系消毒剤(ハイター)を希釈したものを使用してください