第56回:石綿(アスベスト)による健康障害 労災認定の相談ができます |
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玉島協同病院 院所長 道端 達也 |
現在、いろいろな意味で石綿がニュースや新聞などで取りあげられ、大きな社会問題となっています。今回は、石綿によっておこる健康障害と労災認定について、専門家の道端達也医師に話を聞きました。 石綿による疾病は、図1のようなものがありますが、以下、順を追って説明します。 1 石綿肺 粉塵を吸入することによって肺におこる繊維増殖性変化(気管支や肺胞という呼吸をする小さな袋の中に繊維状の物質や細胞が増える)をじん肺といいます。じん肺のうち、『いしわた』によって生じたものを「石綿肺」といいます。症状は、咳、 息切れ、 痰などですが、最初はレントゲンに変化があっても無症状のことが多いです。かなり肺機能が悪化した場合や気管支炎、気胸、肺結核と合併した場合、一定の用件が満たされれば業務上の疾患(労災認定)と認められます。 2 肺癌 肺癌は、顕微鏡で見た場合、大きく四種類に分けられるのですが、どの種類の癌でも石綿で起こる可能性があります。石綿肺↓肺癌となる場合と、石綿肺がなく直接肺癌が起こる場合があります。 石綿肺の方が肺癌になった場合、比較的労災の手続きは簡単(と言っても面倒ですが)にできます。しかし、石綿を吸っていたが、石綿肺がなく肺癌になった場合、労災の認定はややこしくなります。基本的には十年以上石綿を扱っている必要があります。 3 中皮腫 中皮というのは、肺や心臓・腹部臓器・睾丸を覆っている薄い膜のことです。それぞれ、胸膜、心膜、腹膜、精巣鞘膜と言います。それらの悪性腫瘍が中皮腫です。一番多いのが胸膜中皮腫で、次に腹膜中皮腫が続きます。症状は、胸痛や咳、呼吸困難などです。石綿肺があったり、一年以上の業務で、かつ、医学的に石綿による変化が認められれば業務上の疾病と認められます。 4 胸膜病変 胸膜とは、肺を覆っている二枚の薄い膜っで、肺が呼吸で拡がったり、縮んだりする時の摩擦を小さくする役割をしています。石綿のせいで、その膜の間に液体がたまったり(良性石綿胸水)、膜と膜が癒着したり(び漫性胸膜肥厚)することがあります。これらのため、療養を必要とする肺機能障害が起こった場合、業務上の疾病と認められる可能性があります。 以上、若干難しいこととを書きましたが、不明の点は、みずしま診療所産業医学科までお問い合わせください。
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