第133回:どうされましたかI |
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水島協同病院 西澤正人 医師 |
組合員さんから「私は70歳女性です。骨粗しょう症について詳しく教えてください」と質問があり、今回、水島協同病院の西澤正人医師に答えてもらいました。 ◆骨密度と骨質の要因骨粗鬆症は骨強度の低下を特徴とし、骨折の危険性が増大しやすくなる骨格疾患と定義されます。骨強度は大雑把には骨密度(カルシウム・セメントにたとえられる)と骨質(コラーゲン・鉄筋にたとえられる)の2つの要因で規定されます。加齢、閉経などによる骨密度の低下と骨質の劣化が骨強度低下させます。特に女性では閉経後に骨密度が急速に低下します。この自然経過に加えて、遺伝的要因、栄養不足、運動不足、生活習慣などが加わって骨強度が著しく低下した状態が骨粗鬆症です。 ◆特に高齢者では患者数は最新の統計では1280万人と推計されます。骨粗鬆症は全身的に骨折危険性が増大した状態です。特に高齢者では骨折の発生が生活機能とその質を低下させるだけではなく、長期的には死亡リスクを上昇させ、生命予後に影響を及ぼします。特に背骨と大腿骨の骨折の影響が大きいと言われています。高齢者大腿骨頚部骨折は寝たきりになる原因第3位となっております。さらに1年後に介助無しでの外出可能な例は約30%に過ぎないとされます。 ◆薬物療法で治療骨粗鬆症と診断された場合、骨折発生予防のため、治療が必要です。 治療の主体は薬物療法です。治療薬には骨の過度の吸収を抑制する薬剤と骨の形成を促進する薬剤の二つの種類があります。どちらも骨折予防に優れた効果があり、欧米では骨折の発生が減ったとの報告があります。昔からあるカルシウムやビタミンDなどは骨の代謝を改善しますが骨折予防効果はかなり劣るので、補助の薬として使われます。さらに最近では生活習慣病(糖尿病、腎臓病、高血圧など)も骨質の劣化をおこすことが解明されてきています。骨に関しては、骨粗鬆症の治療のみならず、生活習慣病の治療も非常に重要であることを加えてご理解いただきたいと思います。 骨は「皮質骨(ひしつこつ)」と「海綿骨(かいめんこつ)」という2種類の骨からり立っています。
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