第164回:歯科シリーズ@「CAD/CAMシステム稼働」
歯科医師 辻 重真水島歯科診療所
昨年の4月の保険改定で、「保険CADクラウン」という新しい歯冠修復法が保険導入されました。この方法は、「CAD/CAM」(コンピューター技術を応用した造型法)を応用して、コンピュータソフトウエア上でクラウン(冠=かぶせもの)の設計を行い、データを造型装置に転送して、材料ブロックから削り出してクラウンを製作するというものです。現時点では適用できる部位が小臼歯部のみと限定されており、ブリッジ(橋掛けの冠)には適用されていません。また使用材料はハイブリッドレジン(複合材料からなる合成樹脂)に限定されています。
「保険CADクラウン」の製作手順の概要は以下の通りです。
- @従来と同様に歯型の採取を行う。
- A取った歯型で石膏模型を作製し、3Dスキャナーで立体スキャンを行う。
- Bコンピューター画面上でクラウンの設計を行う。
- Cクラウン設計データを削り出し装置に転送し、材料ブロックからクラウンを自動で削り出す。
- D出来上がったクラウン。
水島歯科では以上の工程を今年2月より、完全自家生産できる体制をとっています。
従来の保険治療では、小臼歯のクラウンは銀合金によるものが中心であったため、材質的には堅牢でしたが、審美性(見た目)に問題がありました。今回導入された「保険CADクラウン」は、歯冠色を再現できるため、審美的に修復することができます。ただ、材質的に長期の耐久性にはまだ不安があるのが現状です。色調再現性や耐久性の面では、自費による歯冠修復法で使用されるセラミック系材料の方が優れているので、実際に適用する場合には、事前にこれら各種の修復法について理解された上で選択されることが大切です。お気軽にご相談ください。
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石膏模型をスキャン |
冠の設計中 |
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冠の設計イメージ |
削り出し装置 |
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削り出し中 |
模型にあわせる |